リスク・マネジメント計画は、プロジェクトのリスク・マネジメント活動を実行する方法を定義するプロセスです。
綿密かつ明確なリスク・マネジメント計画を策定することにより、他の5つのリスク・マネジメント・プロセスが成功する確率は高まります。リスク・マネジメント計画を策定するプロセスでは、次の点を確実に実行することが大切です。
- リスク・マネジメントの実行レベル、やり方、可視化の度合い等が、組織における当該プロジェクトのリスクと重要性に確実に釣り合うものとする
- リスク・マネジメント活動に十分な資源と時間を割り当てる
- リスクを評価するための合意された基準を確立する
リスク・マネジメント計画のプロセスは、プロジェクトの構想段階で開始して、プロジェクト計画を策定する初期の段階に完了すべきです。
インプット
プロジェクト・スコープ記述書
プロジェクト・スコープ記述書は、プロジェクトとその要素成果物について、想定する可能性の幅を明確に認識して、さらにリスク・マネジメントの実施が最終的にいかに意義のあるものかというフレームワークを確立するものです。
コスト・マネジメント計画書
コスト・マネジメント計画書では、リスク予算、コンテインジェンシー、 マネジメント予備等を申請する方法、およびそれらを使用する方法を定義します。
スケジュール・マネジメント計画書
スケジュール・マネジメント計画書では、スケジュール・コンティンジェンシーを申請する方法、およびそれらを使用する方法を定義します。
コミュニケーション・マネジメント計画書
コミュニケーション・マネジメント計画書では、プロジェクトで発生する相互作用を定義して、異なる期間(および場所)において、さまざまなリスクやその対応策に関する情報を誰と共有するかを規定します。
組織体の環境要因
リスク・マネジメント計画プロセスに影響を与える組織体の環境要因には以下のようなものがあります。
- リスク態度
- 組織が容認できるリスクの度合いを示すリスク許容度
組織のプロセス資産
リスク・マネジメント計画プロセスに影響を与える組織のプロセス資産には以下のようなものがあります。
- リスク区分
- 概念と用語に関する共通の定義
- リスクを記述する書式
- 標準テンプレート
- 役割と責任
- 意思決定に関する権限のレベル
- 教訓
- ステークホルダー登録簿
効果的なリスク・マネジメント計画書を作成するための要素としてレビューすべき不可欠な資産になります。
ツールと技法
計画会議と分析
プロジェクト・チームは、リスク・マネジメント計画書作成のために計画会議を開催します。リスク・マネジメント活動に関するハイレベルな計画は、これらの会議で決定します。
計画会議の参加者
- プロジェクト・マネジャー
- 主要なプロジェクトチーム・メンバー
- ステークホルダー
- リスクの計画策定と実行のアクティビティをマネジメントする組織内部の責任者
- その他必要な人々
計画会議の内容
計画会議では、以下のような内容を取り扱います。
- リスク・マネジメントに関するコスト項目とスケジュール・アクティビティを作成し、プロジェクトの予算とスケジュールに組み込む
- リスクに関わるコンティンジェンシー予備の申請方法を定めて、レビューする。
- リスク・マネジメントの責任を割り当てる
- リスクのレベル、リスクの種類別発生確率、プロジェクト目標の種類別影響度、発生確率・影響度マトリックスなど、組織に共通するリスク区分の テンプレートと用語定義のテーラリングの実施
- プロセスに必要なその他の手順に関するテンプレートの作成
アウトプット
リスク・マネジメント計画書
リスク・マネジメント計画書は、プロジェクトにおけるリスク・マネジメントの体系と実行方法を記述します。
リスク・マネジメント計画書はプロジェクトマネジメント計画書の構成要素で、以下の項目が含まれます。
- 方法論
プロジェクトのリスク・マネジメントを行うために適用する取り組み方、ツール、データ源を定義します。 - 役割と責任
リスク・マネジメント計画書に記載する活動のタイプ別に、 リスク・マネジメントのリーダー、支援者、チーム・メンバーを定め、各人の責任を明確化します。 - 予算化
リスク・マネジメントに必要な資源を割り当て、コスト・パフォ―マンス・ベースラインに含めるために必要な資金を見積もり、コンティンジェンシー予備の適用手順を規定します。 - タイミング
プロジエクト・ライフサイクルを通してリスク・マネジメント・プロセスを実行する時期と頻度を定め、スケジュール・コンティンジェンシー予備の適用手順を規定し、プロジェクト・スケジュールに含めるリスク・マネジメント・アクティビティを定めます。 - リスク区分
リスク区分は、首尾一貫したレベルの詳細さで、体系的にリスクを特定する包括的なプロセスとなるような枠組みを提供し、かつ、リスク特定のプロセスの有効性と品質に寄与する枠組みを提供します。組織は、あらかじめ作成済みの区分けしたフレームワークを使用することができます。これは、単純な区分の一覧形式のものもあれば、リスク・ブレークダウン・ストラクチャー(RBS)として構造化されたものもあります。
リスク・ブレークダウン・ストラクチャー(RBS)
RBSは、特定したプロジェクト・リスクをリスク区分やその下位区分ごとに分類して、階層的に体系化して表示したものです。
それらのリスクの区分は潜在的なリスクの様々な分野と原因を特定しているものです。
- リスクの発生確率と影響度の定義
一定の品質と信頼性をもった定性的リスク分析プロセスを行うためには、異なるレベルのリスクの発生確率と影響度を定義しておく必要があります。リスク・マネジメント計画プロセスにおいて、発生確率のレベルと影響度のレベルの一般的な定義を定性的リスク分析プロセスで使用するために、個々のプロジェクトに合わせてテーラリングをします。
以下にリスク許容度の定義例を示します。
-
発生確率・影響度マトリックス
プロジェクト目標に対する潜在的な影響に対応して、リスクに優先順位をつけます。
リスクに優先順位をつける一般的な方法として、照合表や発生確率・影響度マトリックスを使用します。通常、発生確率と影響度の具体的な組み合わせは組織によって定められます。この組み合わせにより、リスクを高、中、低と等級づけ、これらの重要度をリスク対応計画に反映させることが可能になります。 -
ステークホルダーの許容度の改訂
ステークホルダーのリスク許容度は、個々のプロジェクトに適用する際に、リスク・マネジメント計画プロセスにおいて改訂します。 -
報告書式
リスク・マネジメントのプロセスを実行した成果を文書化し、分析し、伝達する方法を定義します。リスク登録簿の内容と形式、およびその他の必要なリスク報告事項について記載します。 -
追跡調査
現行のプロジェクトおよび将来のニーズや教訓のために、リスク活動を記録する方法を文書化するとともに、リスク・マネジメント・プロセスを監査するかどうか、およびその方法について文書化します。