調達計画は、プロジェクト調達の意思決定を文書化し、取り組み方を明確にし、納入候補を特定するプロセスです。
調達計画では、プロジェクトの達成に必要なプロダクト、サービス、所産を母体組織の外部から入手する場合に、調達計画から調達終結までのプロセスを、調達する品目ごとに実行します。
主な活動は以下の通りです。
- 外部からの支援を調達すべきかどうかの判断
- 法令、規制、組織の方針等で定めた許認可や専門資格の取得について検討する
- 契約タイプを検討する
- 外部から調達する場合に、何を、どのように、どの程度、いつ調達すべきかを検討する
インプット
スコープ・ベースライン
スコープ・ベースラインは、5.3 WBS作成で説明しています。
要求事項文書
要求事項文書は、5.1 要求事項収集で説明しています。
協業契約
協業契約とは、2つ以上の団体がパートナーシップやジョイント・ベンチャーなどを形成するための法律に基づいた契約上の合意、または当事者間で定義するその他の取り決めのことです。
この契約は、新たに立ち上げたビジネスのために締結されるので、そのビジネス機会がなくなれば終結します。
リスク登録簿
リスク登録簿は、11.2 リスク特定で説明しています。
リスク関連の契約決定事項
11.5 リスク対応計画のアウトプットです。
アクティビティ資源に対する要求事項
6.3 アクティビティ資源見積りにアウトプットです。
プロジェクト・スケジュール
6.5 スケジュール作成のアウトプットです。
アクティビティ・コスト見積り
7.1 コスト見積りのアウトプットです。
コスト・パフォーマンス・ベースライン
7.2 予算設定のアウトプットです。
組織体の環境要因
組織体の環境要因からは、以下の内容を参照します。
- 市場の状況
- 市場で入手可能なプロダクト・サービス・所産
- サプライヤー
- プロダクト・サービス・所産に関する、あるいは業界で使われる典型的契約条件
- 地域特有の要求事項
組織のプロセス資産
組織のプロセス資産からは、以下の内容を参照します。
- 公式の調達条件、手続き、ガイドライン
- 調達マネジメント計画書作成や契約タイプを決める場合に考慮するマネジメントの仕組み
- 過去の実績に基づいて資格を有する納入者からなる重層構造の供給システム
ツールと技法
内外製分析
内外製分析は、特定の作業についてプロジェクト・チームによる遂行がよいか、外部ソースから購入する必要があるのかを判断するためのマネジメント技法です。
専門家への判断
調達計画へのインプットとアウトプットを評価するために利用します。
契約タイプ
契約タイプには、以下の3つのタイプがあり、どのタイプを利用するかをリスクを考慮して決定します。
定額契約
定義されたプロダクト・サービスに対して一定額の固定した総額を定めて支払う契約です。この契約は納入者側に多くのリスクが発生します。定額契約にはさらに以下の3つの選択肢があります。
- 完全定額契約(FFP契約)
最も一般的な契約タイプで、価格が作業開始前に設定されて、作業スコープが変更されない限り価格は変わりません。 - 定額インセンティブ・フィー契約(FPIF契約)
評価指標の達成度合いに応じた金銭的インセンティブが設定されます。 - 経済価格調整付き定額契約(FP-EPA契約)
インフレ率の変化や商品コストの上昇などによる経済状況の変化を支払い価格に反映させる契約です。
実費償還契約
完了した作業にかかった全ての実コストに、納入者の利益相当分を加えた金額を支払う契約です。この契約は購入者側に多くのリスクが発生します。実費償還契約にはさらに以下の3つの選択肢があります。
- コスト・プラス定額フィー契約(CPFF契約)
作業にかかったコスト分に加えて、一定比率をかけた定額フィーを支払う契約です。 - コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約(CPIF契約)
作業にかかったコスト分に加えて、パフォーマンス目標の達成度合いに応じたインセンティブを設定して支払う契約です。 - コスト・プラス・アワード・フィー契約(CPAF契約)
作業にかかったコスト分に加えて、アワード・フィーを支払う契約です。アワード・フィーは契約で定義しますが、パフォーマンス基準を達成したかどうかを購入者が判断した場合にのみ支払われます。購入者の一方的な判断によって支払うかどうかが決められるため、納入者は不服を申し立てられません。
タイム・アンド・マテリアル契約(T&M契約)
実費償還型と定額型の両面を持つ複合型の契約です。要因の補強や、専門家の調達など短期間でまとめることができない時に外部からの支援等に採用されることが多いです。
上記、3つの契約と選択肢については、特徴と名称(英語略称も含めて)理解しておきましょう。PMP試験に出題されやすいところです。
特に納入者と購入者のどちらにリスクがある契約なのかは重要なポイントです。
アウトプット
調達マネジメント計画書
調達マネジメント計画書は、プロジェクトマネジメント計画書の補助計画書の1つであり、調達文書の作成から契約終結までの調達プロセスをどのようにマネジメントするのかについて記述します。
以下のような点について記載します。
- 契約タイプ
- リスク
- 独自見積りの必要性
- 母体組織との関係
- 標準の調達文書の必要性
- 複数サプライヤーのマネジメント
- 他のプロジェクト活動との調整方法
- 制約条件や前提条件
- リードタイムとスケジュール
- 内外製決定の方法
- スケジュール作成と調整
- リスク軽減のための、保険契約への要求事項
- WBSの作成と維持
- 契約作業範囲記述書の形式
- 応札適格者の選定
調達作業範囲記述書
個々の調達のための作業範囲記述書(SOW)は、以下の内容を記述します。
- 仕様
- 必要量
- 品質レベル
- パフォーマンスデータ
- 実施期間
- 作業場所
- その他要求事項等
調達SOWは、明確、完全、簡潔に記述します。また、調達SOWは、署名して契約を締結するまでは、調達プロセスの進行に合わせて、必要に応じて改訂したり、洗練したりします。
調達SOWは、プロジェクト作業範囲記述書として受注側のプロジェクト立ち上げのインプットになります。
内外製決定
内製か外製かの決定に関する文書について、正当な理由を簡潔に記述します。
調達文書
調達文書は納入候補からプロポーザルを募集するために用います。
以下のような文書を準備します。
- 情報提供依頼書(RFI)
- 入札招待書(IFB)
- 提案依頼書(RFP)
- 見積り依頼書(RFQ)
- 入札公告
- 交渉招待書
- 納入者一次回答書
最初の4つは特にPMP試験に出題されることが多いですので、英語略字も含めて理解しておきましょう。
RFI、IFB、RFP、RFQの中で、最も詳細な情報を要求する文書はRFPです。
発注先選定基準
納入者からのプロポーザルの等級付けや採点のために作成します。
以下のような基準で文書化します。
- ニーズの理解
- 全体コストまたはライフサイクル・コスト
- 技術力
- リスク
- マネジメントの取り組み
- 技術的な取り組み
- 保証
- 資金力
- 生産能力と意欲
- ビジネスの規模とタイプ
- 納入者の過去の実績
- 照会状
- 知的財産権
- 所有権
変更要求
プロジェクトマネジメント計画書に対する変更要求になります。
変更要求は、統合変更管理プロセスでレビューして処理されます。