スケジュール作成は、アクティビティ順序設定、所要期間、資源に対する要求事項、スケジュールの制約条件等を分析して、プロジェクト・スケジュールを作成するプロセスです。
インプット
アクティビティ・リスト
アクティビティ定義プロセスのアウトプットです。
アクティビティ属性
アクティビティ定義プロセスのアウトプットです。
プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図
アクティビティ順序設定プロセスのアウトプットです。
アクティビティ資源に対する要求事項
アクティビティ資源見積りプロセスのアウトプットです。
資源カレンダー
プロジェクト人的資源マネジメントエリアのプロジェクト・チーム編成プロセスと、プロジェクト調達マネジメントエリアのプロジェクト・チーム編成プロセスのアウトプットです。
アクティビティ所要期間見積り
アクティビティ所要期間見積りプロセスのアウトプットです。
プロジェクト・スコープ記述書
プロジェクト・スケジュールの作成に影響する条件が記載されています。
組織体の環境要因
組織体が保有するスケジューリング・ツール等が影響を与えます。
組織のプロセス資産
スケジュール作成プロセスに影響を与えるものとして以下のようなものがあります。
- スケジューリング方法論
- プロジェクト・カレンダー
ツールと技法
スケジュール・ネットワーク分析
スケジュール・ネットワーク分析は、プロジェクト・スケジュールを作成する技法です。
この分析には、次に説明するクリティカル・パス法やクリティカル・チェーン法、資源平準化、What-ifシナリオ分析など様々な分析技法を使います。
クリティカル・パス法
クリティカル・パス法は資源に関する制限を考慮せずにスケジュール・ネットワーク上を往路時間計算(フォワード・パス)分析と復路時間計算(バックワード・パス)分析を使って、すべてのアクティビティの理論的な最早開始日と最早終了日、最遅開始日、最遅終了日を求める技法です。
クリティカル・パス法はPMP試験でも多く出題されますので、ここで詳細に説明しておきます。
クリティカル・パスの計算する流れは、プロジェクトの開始から終了までの全てのアクティビティの最早開始日(ES)と最早終了日(EF)を見ていきます。
次に、プロジェクトの終了から逆に進みながら、アクティビティ全ての最遅開始日(LS)と最遅終了日(LF)を見ていきます。
フォワード・パスの計算
アクティビティSの計算
最早開始日:スタートのアクティビティのため「1」
最早終了日:最早開始日 + アクティビティSの所要期間 – 1 = 1
* 単純に最早開始日 + 所要期間ではないので注意
アクティビティAの計算
最早開始日:アクティビティSの最早終了日 + 1日 = 2
最早終了日:最早開始日 + アクティビティAの所要期間 – 1 = 6
アクティビティCの計算
最早開始日:アクティビティAの最早終了日 + 1日 = 7
最早終了日:最早開始日 + アクティビティCの所要期間 – 1 = 12
アクティビティBの計算
最早開始日:アクティビティSの最早終了日 + 1日 = 2
最早終了日:最早開始日 + アクティビティBの所要期間 – 1 = 5
アクティビティDの計算
最早開始日:アクティビティBの最早終了日 + 1日 = 6
最早終了日:最早開始日 + アクティビティDの所要期間 – 1 = 8
アクティビティEの計算
最早開始日:アクティビティDの最早終了日 + 1日 = 9
最早終了日:最早開始日 + アクティビティEの所要期間 – 1 = 9
アクティビティFの計算
最早開始日:アクティビティCとEの最早終了日を比較して遅い日付 + 1日 = 13
最早終了日:最早開始日 + アクティビティFの所要期間 – 1 = 14
バックワード・パスの計算
アクティビティFの計算
最遅終了日:復路のスタートのため、アクティビティFの最早終了日の14が最遅終了日となります。
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティFの所要期間 + 1 = 13
アクティビティCの計算
最遅終了日:アクティビティFの最遅開始日 – 1 = 12
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティCの所要期間 + 1 = 7
アクティビティAの計算
最遅終了日:アクティビティCの最遅開始日 – 1 = 6
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティCの所要期間 + 1 = 2
アクティビティEの計算
最遅終了日:アクティビティFの最遅開始日 – 1 = 12
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティCの所要期間 + 1 = 12
アクティビティDの計算
最遅終了日:アクティビティEの最遅開始日 – 1 = 11
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティCの所要期間 + 1 = 9
アクティビティBの計算
最遅終了日:アクティビティDの最遅開始日 – 1 = 8
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティCの所要期間 + 1 = 5
アクティビティSの計算
最遅終了日:アクティビティAとBの最遅開始日を比較して早い日付 – 1 = 1
最遅開始日:最遅終了日 – アクティビティSの所要期間 + 1 = 1
フロートの計算
フロートとは、トータル・フロートとも呼ばれ、プロジェクト全体の終了期間を遅らせない範囲で、あるアクティビティを遅らせることが出来る期間のことです。
フロートの計算は以下の式で求められます。
「フロート = 最遅開始日 – 最早開始日」
フリーフロートの計算
フリーフロートとは、後続のアクティビティの開始を遅らせない範囲で、あるアクティビティの開始を遅らせることができる期間のことです。
フリーフロートの計算は以下の式で求められます。
「次のアクティビティの最早開始日 – 該当のアクティビティの最早終了日 – 1」
今回の例ですと、アクティビティFとアクティビティEの間に、3日のフリーフロートがあります。
クリティカル・パス
クリティカル・パスとは、「所要期間が最長の経路」をいいます。
今回の例ですと、アクティビティS → A → C → Fがクリティカル・パスになります。
また、クリティカル・パス上のアクティビティをクリティカル・アクティビティと呼びます。
クリティカル・チェーン法
クリティカル・チェーン法とは、限られた資源に合わせてプロジェクト・スケジュールを修正するスケジュール・ネットワーク分析技法です。
クリティカル・チェーン法では、不確実性をマネジメントするために、実作業のないスケジュール・アクティビティであるバッファーを追加します。クリティカル・チェーンの最後部にあるバッファをクリティカル・バッファーと呼び、作業の遅れからプロジェクト目標終了日を守るために設定されます。
また、クリティカル・チェーン上にはない、相互に依存関係をもつ一連のタスクからなるチェーンがクリティカル・チェーンに合流するポイントには合流バッファーが設定されます。この合流バッファーは、クリティカル・チェーンに合流するチェーンの遅延から守るためにあります。
資源平準化
資源平準化は、クリティカル・パス法で分析したスケジュールに適用するもので、共有もしくは欠かすことの出来ない資源が特定の期間または限られた量でしか使用出来ない状況で、特定の資源の使用を一定レベルに保つために用いられる分析技法です。
資源が許容量を超えてしまった場合、資源平準化が必要になり、クリティカル・パスを変更する原因となる場合が多いです。
What-ifシナリオ分析
What-ifシナリオ分析は、「シナリオxの状況が発生した場合にどうなるか?」という課題分析で、好ましくない条件下や予期しない事態による影響を軽減するために、コンティンジェンシー計画や対応計画の策定に使われます。
リードとラグ
アクティビティ順序設定プロセスのツールと技法で説明したものと同じで、ネットワーク分析の歳に調整するために使用します。
スケジュール短縮
スケジュール短縮とは、スケジュールに対する制約条件や指定日、スケジュール目標等を満足させるために、プロジェクト・スコープを変更することなくプロジェクト・スケジュールを短縮させることをいいます。
技法には以下の2つがあります。
- クラッシング
コストとスケジュールのトレードオフを分析して、最小の追加コストで最大の期間短縮を図る技法。クラッシングは、資源追加によって期間を短縮できるアクティビティにのみ有効な技法です。ただし、クラッシングを行うと、リスクやコストの増加を招く場合もあります。
- ファスト・トラッキング
通常は順を追って実施するアクティビティを並行して実行させることで期間短縮を図る技法です。デメリットとしては、手直しやリスクの増大を招くことがあります。
クラッシングとファスト・トラッキングの違いは試験に出題されることが多いので、しっかりと整理しておきましょう。
スケジューリングツール
自動化スケジューリングツールにより、アクティビティネットワーク図等のインプットに基づいて開始/終了期日を出力するスケジューリングのプロセスが促進されます。
アウトプット
プロジェクト・スケジュール
プロジェクト・スケジュールは通常以下のような形式を使って図示します・
マイルストーン・チャート
マイルストーン・チャートは、主要な要素成果物に関する予定開始日や終了日、外部との重要なインタフェースを示します。
バー・チャート
バー・チャートは、アクティビティをバーで表して、アクティビティの開始、終了、予定所要期間を示します。
スケジュール・ベースライン
スケジュール・ベースラインは、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素で、スケジュール・ベースラインとスコープ・ベースライン、コスト・パフォーマンス・ベースラインの3つを合わせてプロジェクト・ベースラインと呼びます。
スケジュール・データ
スケジュール・データには以下のものが含まれます。
- スケジュール・マイルストーン
- スケジュール・アクティビティ
- アクティビティ属性
- 特定した前提条件や制約条件
- 期間ごとの資源に対する要求事項
- 代替スケジュール案
- コンティンジェンシー予備のスケジューリング
プロジェクト文書更新版
プロジェクト文書更新版には、以下のようなものが含まれます。
- アクティビティ資源に対する要求事項
- アクティビティ属性
- カレンダー
- リスク登録簿